キリ番
□Be Mine
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「あの時は、すごかったな。マスコミやら何やらで、村がやけに賑わってた」
「ほんの二週間程度さ。バノーラの味として世界に定着するまでには至らなかった」
「だが、今でも土産物カタログには載ってるぞ」
そう言いながら、神羅で発行されているフリーペーパーを開く。
ソルジャーは、その存在自体が神羅の重要機密であるがために、休暇の時も自由な行動が制限されることがほとんどだ。
生家に帰る事も許されない者もいる。
故郷からの仕送りが、諸都合で不可能な家も多い。
そんな彼らのために、故郷の名産品などを取り寄せることのできる、通販誌のようなものが支給されているのだ。
「頼んだのか?」
「いや」
首を振る幼馴染に、切り出せない言葉。
誰の為に、それを作ったのか。
誰を想って、それを作ったのか。
結局、何も変わっていないのだ。
背中に白い果実を隠していた、あの頃から。
「どうした?」
「何がだ」
「難しい顔をしてたぞ」
眉間に皺が寄っていた、と額をつつくアンジールに、ジェネシスはまた眉を寄せる。
「俺は、噂の子犬とは違うんだ」
「あぁ、確かにあれの方が何倍も素直だな」
「アンジール」
睨み付けてやれば、すまない、と業とらしい口だけの謝罪を述べる幼馴染。
甘やかされたい訳じゃない。
微妙なその感覚を、理解してはくれないのだろうか。
「…次の任務は、どこだったか」
「俺は明後日から、社長の護衛だ」
「ジュノンか?」
「あぁ。お前もか?」
「俺は先行してご子息のお守りさ」
明後日に、ジュノンで行われる重役会議。
それに参加するという、まだ歳若い社長の息子。
その手腕は噂に良く聞くけれど、この様子だとすぐにでも重役に取り立てられるだろう。
「…その後は、すぐにウータイに出兵だと」
「お互い、大変だな」
「まあ、セフィロスよりはましだが」
「確かに」
言いながら、顔を見合わせて笑みを零す。
すぐに人をサンプル扱いするあの科学者は、どうにも好かない所がある。
体調管理の指導を受けている身分としては、あまり文句は言えない立場だけれど。
笑い合っていれば、ピリリ、と電子音が鳴る。
アンジールの携帯だ。
「どうぞ」
どうせ、あの子犬からの電話だろう。
今度は何をやらかしたのだろうか。
苦笑混じりにアンジールが電話を取れば、すぐに聞こえる大きな声と、騒音。