キリ番

□ミッション00
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やっぱり、今日の俺は厄日だ。
よりにもよって、一番聞かれたくない奴に出くわした。
それも、監視カメラの目の前で。



「………レノさん、こんにちは、です」

「気味の悪い敬語使ってんじゃねぇぞ、と」



タークスも暇なのか、八番街のショップの袋を片手に提げたまま、レノは大きく欠伸をした。
畜生、神様のバカヤロウ。
さっきから、ただでさえ色んな人の視線が痛いのに、この口の軽そうな奴にだけは会いたくなかったんだ。
全力でからかった上に、絶対、面白おかしく尾ヒレを付けた噂を流すに決まってるんだ。



「……俺、その…」

「何だよ、はっきり言えよ、と」



はっきり言えるようなことなら、俺だってはっきり言ってます。
ぶん殴るぞ。



「俺っ……ぉ、男の子が…」

「男の子が?どうした?」

「……すき…です……」



マジで涙、出てきた。
崖から跳び降りたい。
ここは神羅カンパニーの本社ビル、64階のスポーツジム。
受付のおばさんに声を掛けたら、誰にいじめられてるの、と誠心誠意心配されて、ちょっと悪い気持ちになったばっかりだというのに。
膝を抱えて蹲った俺に、頭上から降る声。
どう聞いても、笑いを堪えてやがる。



「ヘェ、神羅のソルジャー様が、まさか男好きとはなぁ」

「ちがう!黙れ!」

「男の子が好きです、だったか?俺も貞操に気を付けなきゃな」

「違うって言ってるだろ!ぶっとばすぞ!」



消えてしまいたい。
厄日というか、最悪だ。
ジェネシスの野郎、恨んでやる。
俺が恥ずか死んだら、絶対「歯軋りの呪い」とか掛けてやる。



「もうベッドは体験済みかよ、と?」

「してない!しない!」

「恥ずかしがるなって。実は、ソルジャー同士ヤリまくり、とかなんだろ?」

「ちがう!俺はセフィロスだけとしか寝…」



言い掛けて、はっとした。
俺とセフィロスの関係は、1st三人以外には伏せられてるんだ。
今、すごい勢いで漏らしちゃった気がする。
しかも、暗に「俺たち経験済みです」みたいな所まで言っちゃった気がする。
顔を上げれば、あぁ、やっぱりか、って表情のレノ。



「ヘェ、でもザックス君は英雄様だけじゃ飽きたらず、他のソルジャー達にも手を出すわけだ。なにしろ男の子が大好き、だもんなぁ」



レノのバカヤロウ。
お前なんか、大嫌いだ。
俺の周りにはドSしか居ないのか。
本気で泣きそう。
目尻に涙が浮かんでるよ、今。
レノの言葉責めに耐えてたせいだろうか。
気付かなかった、ドアの開く音。



「よ、シスネ」

「シスッ…!?」



明らかに、会話を聞いて硬直した表情の、シスネ。
シャワールームでも借りてきた後なのだろうか。
濡れた髪が色っぽいなんて、反射的に口説き文句を言おうとしたら。



「ふ、不潔っ!」



一言叫んで、勢いよく扉が閉められた。
不潔って、お前。
まさか、信じたんじゃないだろうな!



「れっ、レノ!!」

「あーぁ、ありゃあもうダメだな。ソルジャーはみんなフケツだと思ってるぞ、と」

「撤回しろ!俺達ソルジャーは女の子をだなぁ…!」

「じゃ、お仕事に行ってきますよ、と」



へらへらと笑いながら、片手にグラビア雑誌を持って、レノは出て行った。
仕事って、何の仕事だよ。
そんなツッコミを入れる余裕すら、なかった。
俺はこれから、女性社員の皆様にどんな可哀想な目を向けられることになるんだろう。
あぁ、どこかにいらっしゃる俺の運命の女神様。
頼むから、早く俺を助けてください。
この際、セフィロスでもいいから。
いや、やっぱりあのツインテールは可愛かったな。






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