キリ番

□散る赤抱いたその指は
1ページ/3ページ





「ひとつだけ願い事するなら、何にする?」



滴る雨の雫。
じわりと奪われていく体温。
拳の上から包まれた指は、あたたかい。



「お前と、ずっと一緒に居たい」

「俺は、平和な世界が欲しい」



雨に濡れて垂れた髪を掻き上げて、笑う。



「何故」

「そうすれば俺達、仕事なくなるし。そしたらあんたと一緒に居れるだろ?」

「…失業するぞ」

「退職手当もらえばいいだろ」



からからと笑う声を、掻き消すような雨音。
一言も聞き漏らしたくなくて、腕を引いて抱き寄せた。






















散る赤抱いたその指は























握った刀。
弧を描くたび、飛び散る血飛沫。
大地を紅く彩って、また雨に流れていく。
人間を斬ることに苦痛を感じなくなったのは、どれだけ昔の話だろうか。
振り返れば、黒い髪、大剣を振るって敵兵を薙ぎ倒す彼の姿。
しとしとと。
降る雨の中、またひとり。
伏した体から、土に染み込む生命の色。



「セフィロス、何ぼーっとしてんだよ!」



少し呆けている間に、隣に立っていたザックスが怪訝そうな顔をする。
握った剣から滴る血脂を軽く払って、溜息を吐く。



「…すまないな」

「気を付けろよ?遊びじゃねぇんだから」

「わかってるさ」



ザックスの言葉に、軽く頷いて。
また、刀を振りかぶった。






次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ