キリ番
□ながめせしまに
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青い空を見上げると、いつも彼を思い出す。
教会の崩れた屋根から覗く空。
彼との、思い出の場所。
果たされなかった約束。
もうすぐ、五年になる。
彼と、最後にここで会った、あの日から。
変わらない空の下、あなたも今、この雲を眺めている?
ながめせしまに
「エアリス!」
扉を開けて、にこやかに笑いながら呼ぶ声。
「ザックス」
花の手入れを中断して、エアリスは茶色の髪をふわりと揺らして、立ち上がった。
月に何度かの、休暇。
ザックスはいつも、この廃教会を訪れる。
今日もまた、珍しいものでも手に入れたのだろうか。
片手に紙袋を握っていた。
「それ、なに?」
「さっきウォールマーケットでさ、面白いもの、見つけたんだ」
言いながら、子供のような無邪気な笑みを浮かべて、がさがさと紙袋を広げた。
中から出てきたのは、チョコボをモチーフにした、玩具。
「ほら、風呂とかに浮かべて遊ぶやつ!エアリス、可愛いもの好きそうだし、彼女へのプレゼントにお薦めって店長も言ってたし」
「…わたし、お風呂で浮かべて遊んだり、しないけど」
「ぇ、マジ?」
やっちまった、と頭を抱えて項垂れるザックスに、エアリスは小さく笑みを零す。
少しだけ不細工な作りの、チョコボの玩具。
教会の机に置かれたそれを、持ち上げて。
「今日からは、遊ぼうかな」
笑って言えば、ザックスはぱっと表情を明るくして、にこりと笑った。
「よかったー、ちょっと不細工だけどさ、愛敬あるだろ?」
「ふふ、そうね」
黄色い頭をそろりと撫でて、エアリスも笑みを浮かべた。
ザックスはここを訪ねる時、よく変わったものを土産に持ってくる。
それは、任務先で仕入れた花の苗や種だったり、どこかで拾ったような石だったり。
子供は妙なものを見つけると、すぐに持ち帰って父親や母親に見せたりすると言うけれど。
ザックスのそれも、また良く似たようなもので。
「ほんと、子供みたい」
「それは、少年心を忘れてない素敵な男性ね、ザックス!…みたいに受け取っても、いい?」
「それ、無理がある」
ザックスが軽口を言えば、エアリスはびしりと指を差して、指摘する。
「あっはっは、そうだよなぁ」
からからと笑うザックスに、つられたように微笑んで。
「でも、ザックスのいいところだよ」
エアリスの言葉に、互いに顔を見合わせて。
どこか恥ずかしくて、頬を赤らめて、ふいと顔を逸らした。