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□銀色のバニラ
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デートの途中で呼び出されて、二人揃って任務を与えられて。
最終公開日の映画のチケットも無駄になって、二人でセフィロスの家に帰ったのは夜もどっぷりと更けた頃。
「疲れたな」
「ほんとだよ。護衛ってタークスの仕事じゃないのかよ」
「タークスは今調査で」
「わかってるよ、愚痴ってみただけ」
大きく伸びをして、わざとらしく甘えるようにセフィロスに抱き付けば、返されたのは小さな微笑み。
「だが、代わりに明日は休みだ。ゆっくり過ごせるな」
銀色のバニラ
頭から湯を浴び、流れていく泡。
前髪を掻き上げて、ザックスは先に湯船に浸かるセフィロスに目を向ける。
「やっぱり広い風呂っていいよな」
「そうだな、アヒルも10匹浮かべられる」
「いつも浮かべてるのかよ」
「冗談だ」
まさか、とザックスが肩を揺らして見せれば、むっとして返された言葉。
反対側から湯に浸かって顔を上げると、どことなくばつが悪そうに、セフィロスは視線を逸らした。
「ん?どうした?」
「タオルくらい巻け」
「別にいいじゃん、どうせいつも見てんだろ」
「……襲われたいのかお前は」
「へ?」
ザックスが間の抜けた声を上げると同時に、伸ばされた腕。
耳元を撫でる指にくすくすと笑みを浮かべるザックスの、脇腹を擽ってやれば。
「ふあっ!?あははっ、くすぐ、ったい、って!セフィっ、あはは、やめろっての!」
「もっとか?」
「ばっか、ちがうっ、ひっ、ははっ」
ばしゃばしゃと湯を波立てて降参のポーズをとってみせるザックスに、セフィロスは満足げに微笑む。
まだ荒い息を落ち着かせるため、ザックスはゆっくりと深呼吸をした。