キリ番

□あるひとつの幸福論
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隣に立ってる幸せと、並んで歩く幸せと。
どちらも変わりない幸福ではあるけれど、いちばん幸せを感じていられるのは。






















あるひとつの幸福論























任務から帰り、報告を終えたその足でシャワールームに向かう。
真っ先に会いに行きたいけれど、土と汗で汚れたままじゃ、女の子は嫌がるだろうから。
いつもより少し多めのシャンプーを泡立てながら、温い湯を浴び続ける。
今回のお土産は、広い草原の映ったポストカード。
スラム以外の世界を知らないエアリスにとって、ポストカードに写る景色は未知のもの。
テレビの中に並ぶ町並みも、現実とは違うものな気がするとも言っていた。
そんなエアリスに、少しでも広い世界を教えたくて。
外の世界は怖くない、エアリスが訪れるのを待っている場所ばかりなんだと。
きゅ、と蛇口を捻り、軽く顔を拭う。
コインランドリーに入れた制服も、そろそろ乾燥に入った頃だろう。
腰にタオルを巻いたまま、更衣室内の自販機でミネラルウォーターを買う。
渇いた喉を潤した水のボトルはすぐ空になり、くずかごへ投げ捨てた。
ドライヤーで髪を乾かしていれば、ピ、ピ、と機械音が鳴る。
乾燥が終わった音だ。
鼻歌を歌いながら、ランドリーの蓋を開ける。
まだ熱い服を軽く振って、熱を飛ばす。
袖を通しながら考えるのは、スラムに咲く花と、花に囲まれて笑う少女。
荷物をつかみ、急ぎ足でシャワールームを出た。





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