キリ番

□Be Mine
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本当は、知っていた。
あの村に居た頃から。
差し出せずにいる、白い果実。
背中に隠した、秘密の願い。






















Be Mine























昔から、そうだった。



「良いか、ジェネシス。ソルジャーは」

「常に誇りを持ち合わせていろ、か?聞き飽きた」



溜息混じりに、読みかけの本を閉じる。
午後の麗かな、光の差す窓辺。
白いテーブルに置かれた、冷めた紅茶。



「…今日は『LOVELESS』じゃないのか?」



向き合った椅子に座るアンジールが、閉じられた本の表紙に目を向ける。
いつもジェネシスが読む抒情詩とは、違うタイトル。



「研究や解釈には、他の文献の知識も必要だからな」

「本当に好きなんだな」



言いながら、カップに残る茶を啜る。
僅かな苦味と、広がる香り。
久々に過ごす、穏やかな時。



「そういえば、セフィロスは?」

「宝条博士のお守り、だそうだ」

「気の毒にな」



くつくつと笑うジェネシスに、アンジールはまったくだ、と肩を竦めた。
部屋の隅、空いた戸棚の中に置かれた、白い果実。
実家から送られてきた、故郷の作物。



「相変わらず、売れ行きは好調らしいな」

「当たり前だ。だが、今思い返してみれば、まだ改良の余地はあったな」



幼い頃、故郷の林檎を使ったジュースを開発した。
世界の皆に、故郷の味を知ってもらいたかったから。
噂に聞く、同じ年頃の幼い英雄に、この味を知って欲しかったから。
そして、何よりも。
幼馴染の、その喉を潤すことを望んでいたから。





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