キリ番

□ラブシチュエーション
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「言っておくけど、お前ら童貞と違って俺は、百戦錬磨だから。」



たぶん、あの一言が間違っていたんだ。
百戦錬磨って言ったって、当然女の子相手だし。
雰囲気いかにも童貞そうな二人と、多少遊んでなくもなさそうな一人。
その三人が俺の家に来て、やけに真剣な顔でエロ本なんかめくってたから。



「…ザックス…いつも、こんなもの、見てるのか」

「寂しい男だなぁ」



その言葉を聞いて、つい言ってしまった。
いや、嘘は言ってないんだけど。



「言っておくけど、お前ら童貞と違って俺は、百戦錬磨だから。」



たぶん、童貞は、禁句だった。
相手は仮にもソルジャー1ST三人。



「ほう…なら、百戦錬磨のザックス様に、しっかりレクチャーでもしてもらおうか?」



あくまで笑顔で、それでも額に浮かんだ青筋を見た。






















ラブシチュエーション























宣言しておこう。
俺は童貞じゃないけれど、男との経験はさすがに、ない。
基本、というか全般的に、俺は女の子専門だ。
世の中には逆の趣向の人間もいるらしいし、それは本人の自由だと思う。
けど、俺は女の子じゃなきゃ、正直ムリだ。
そりゃ、俺は他の人たちに比べれば、かなぁり奔放な方だと自覚してる。
それでも、相手は女の子じゃなきゃ、ムリだ。
…ムリだと言っているのに。



「ばかやろっ…離せ!おいっ、職権乱用上司ども!」



誰もが憧れる英雄サマを筆頭に、1ST三人相手では、さすがの俺でも勝ち目はない。
AVで女の子がされてるみたいな、とんでもない格好で縛られて。
当然、服だって剥かれて。
男の裸見て何が楽しいんだか、笑う三人が不気味だ。



「すみませんでした、訂正するんで、許してください。」



泣きそうな声が、我ながら情けない。
でも、さすがにこの状況、というか体勢は恥ずかしい。
恥ずかしすぎる。



「だってさ。どうする、セフィロス、アンジール?」

「…無論だ」

「子犬からチキンに呼び名を変えても良いなら、許してやらないこともない」



笑顔でめちゃめちゃなことを言う。
理不尽だ。
子犬扱いもそこそこ腹立つが、さすがに『チキンのザックス』は羞恥プレイにも程があるだろ!
心の中で悪態を吐きながら、三人に喧嘩を売るような発言をした30分前の自分を呪った。



「安心しろ、俺はベッドの中では紳士的で有名なんだ」



すごくイイ笑顔で言うジェネシスに、じゃあベッドの外ではどうなんだ、と聞きたくなったけど、墓穴を掘りそうだから、やめた。
あとの童貞くさい二人はどうしてるかと、少し目線を動かせば。



「俺が先だ」

「いや、俺が先だ」



何が先といえば、ナニなんだろう。
さよなら、俺の愛した女の子たち。
はじめまして、めくるめくホモの世界。
ちょちょ切れそうになる涙、どこか他人事のように感じていた。








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