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□35.8℃の体温
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俺の仮・恋人は、世間で英雄って呼ばれてる。
仮って何だって?
だって、仮は仮だ。
上司と部下。
ソルジャー仲間。
お隣さん。
俺たちを形容する言葉は、世の中にごまんと溢れ返ってる。
だから、この関係は、あくまで『仮』。










35.8℃の体温











目を覚ませば、ふかふかのベッドの中。
隣に居たはずのぬくもりは、すっかり冷えてしまっている。
ザックスはゆっくりと体を起こし、大きく欠伸をした。
昨日は、久々の非番だった。
外に遊びに行こうかとも思ったけれど、俺様な恋人は家でゆっくりしたいと我儘を言うから。
結局、たんまりとため込んだ録画の映画を見て、適当な食事を摂って、早いうちに二人で眠った。
会えば毎回体を繋げるわけじゃあない。
お互い、翌日に任務があれば控える。
本当は二人揃って二日の休みの予定だったが、昨日の晩に副社長から連絡が入ったのだ。
急な任務に、セフィロスは溜息を吐いてイエスと答えていた。
ふと壁に掛けられた時計に目をやる。
八時十六分。



「…お早いお出かけで」



誰にでもなく、呟いた。









セフィロスは、きっと今朝早くに出ていったのだろう。
用意されている朝食に、添えられたメモ。
『牛乳は飲んでもいいが、なくなったら買ってくるように』
ちらりとメモを見て、ザックスは冷蔵庫から牛乳パックを取り出す。
ザックスは無類の牛乳好きだ。
だからか、セフィロスの家にも牛乳が常備されている。
そのまま飲み干して、パックを台所に置いた。



「余計なお世話だよ」



メモを書いた人物に、聞こえない悪態をついた。




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