種運命小説【壱】
□毒を喰らわば魂まで
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職業:高校教師。
キラには悩みがあった。
「遅い!」
現在の時刻は夜7時。
そんなに遅いと怒鳴られる程の時間ではないはずなのだが、どうやら目の前の人間にはそれは通用しないらしい。
毎日のようにぶつけられる同じ文句を耳に入れ、キラは苦笑しながら愛車の鍵を開けて車内に乗り込む。
一緒に助手席に乗るシンを見て、これまた毎日のように問う疑問を語りかけてみる。
「…あのね、シン。僕は先生で君は生徒。終わる時間が違うのは当たり前なんだよ。だから待ってなくていいって言ってるのに…」
「何だよ。たまたま用事があったから待っててやったんだろ」
「毎日用事があるなんて忙しい子だね。…いや。違う違う…問題はそこじゃなくて…」
ハンドル部分にぐったりと頭を押し付けて言いたい事を整理する。
シンとは所謂お隣りさんというやつで、小さい頃からずっと一緒だった。
そんな兄妹のような関係を突破して恋仲になったのは一年程前の事。
付き合いは長いので、用事だ何だと言いながらシンが本当に自分を待っていてくれている事も知っている。
健気なくせに人一倍不器用で照れ屋なところは、小さい時から何も変わっていない。
キラが今の高校に勤めてからというもの、シンは毎日帰りを待っていてくれている。
その行為は嬉しい。
問題は…