種運命小説【壱】

□余罪
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知らない間に
全ては崩れ去る

この世界は酷く冷たい
この世界は酷く残酷だ

なんて、なんて悲しい



「ネオ、嫁さんって何?」

彼女の突拍子もない言葉に驚かされるのは今に始まった事ではない。

ステラは周囲に存在する大体の物に無感情だ。
例えば足元に花が咲いていて、それがどんなに綺麗に咲き誇り人の感性を擽る香りを漂わせても、何も考えずに踏み潰す。
それは歩くという動作に彼女の神経が集中してるからであって、悪気がある訳ではない。

だからこそ何かに興味を引かれると病的な程それに関する情報を欲する。一点集中型とは本当に怖いものだ。

仮面下の表情を作る筋肉が苦笑を築き始める。
さて、どう説明するか。

「嫁さんってのはアレだ。結婚した男女の女の方」
「結婚?」
「あー…結婚ってのは好き合ってる奴等がやるモンだよ。結婚したらずっと相手の傍にいる権利がある」

我ながら的を射ない説明だ、とネオは思う。
当然軍人の地位にいる自分はそれなりの国語力が備わってると信じてる。しかし目の前の少女に小難しい単語と気取った文句を並べ説明したところで、既に結果は見えているのだ。

俺は説明能力が貧困な訳じゃないんだぜ!
心の中だけで言ってみる。勿論ただの自己満足で終わるが、そんな事は別にどうでもよかった。

くぐもった唸り声が聞こえる。金に貴ばれた髪が縁取る幼い顔は珍しく歪んでいた。よくわからない、と。
ステラがここまで何かに興味を持つ事は本当に珍しい。骨ばったネオの指が、柔軟性のない脳を納める頭を軽く撫でる。

「それより誰に聞いたんだ?嫁さん、なんて言葉」
「アウル」
「アウルが?」
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