種運命小説【壱】

□アペタイト
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「何回も好きって言ってるのに、信じてくれないキラさんが悪いんですよ」

確かに告白は何回も受けた。それをはぐらかし続けた事実も認める。
しかし、それは状況説明としてはあまりにも不十分だった。動かない身体を投げ出されたベッドから視線だけをある人物達へ向ける。

この部屋に似つかわしくない一人の少女へ。

真っ赤な髪が眼に痛い。意思の強い瞳がキラの視線と交わればたちまち笑顔が宿る。
彼女は今の状況を理解しているのだろうか。男が男を押し倒している有り得ないこの状況を。

「キラさん、あたしの事は気にしないで下さい。邪魔しませんから」

違う。言って欲しい言葉と非常にずれている。

「そうじゃなくて…」
「キラさんに飲ませた痺れ薬、あたしが用意したんです。キラさんとのエッチ公開する条件でシンに渡したんですよ。ね?シン」
「すみません。キラさんの裸他の奴等に見せたくなんかないんですけど…」

謝る所が違うでしょ!
心の中で入れるツッコミは勿論届かない。
抵抗がないせいかシンはやけに上機嫌に笑顔を見せ、手慣れた手付きでキラのベルトを外し白の軍服の前を寛げた。
現れた素肌のきめ細やかさにごくりと喉が鳴る。

「キラさん…」


悪夢の鐘が響く。
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