種運命小説【壱】
□アペタイト
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「…冗談…だよね?」
愛する人の震える声を、彼は滅多に見せない満面の笑顔で迎えた。
事の起こりはつい先程。
仕事が早めに終わり時間が余ったから部屋に来ないかとシンに言われ、特に断る理由のないキラは誘われるままに来訪した。
ここまでは良かった。
用意された紅茶に口をつけて十数分。キラの身体に変化が表れた。
動かない。
体内の細胞全てが金縛りにあい、皮膚を滑る感覚だけが妙に鮮やかだった。微動すらしない四肢が重い。
当たり前のようにベッドに押し倒される身体。他愛ない悪戯をした子供みたいに笑う顔が上にあった。
しかし、その笑顔には更なるサプライズが隠されていたのだ。