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□Il gusto del segreto
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商店街の片隅にある、小さな喫茶店。


「あぁ、いらっしゃい。なのは」


私の、お気に入りの場所。



『Il gusto del segreto』



「今日は何にする?」
「んー…キャラメルミルクがいいなぁ」

黒いリボンで結ばれた綺麗な金髪が、ふわりと揺れる。眼鏡の奥に見える紅い瞳が追うのは、私専用のカップ。

「今日もこれからお仕事?」
「うん、雑誌の撮影と収録があるの」
「芸能人は大変だ」


この人との出会いは半年前。
久しぶりのオフを満喫していた私は、熱狂的なファンの人に見つかっちゃって。

『なのはちゃん!僕、なのはちゃんの大ファンなんですよぉー!!』
『ぁ、ありがとう、ございます…その、今日はプライベートなので』

どうにか切り上げたくても、話を聞いてくれない。それどころか、私の後をついて来る気満々で…どうしようって思ってた時。

『申し訳ないけど、店の前に立たないでくれるかな?』

綺麗なアルトの声。視線を向ければ、ルビーのような紅い瞳。でもそれは私にじゃなくて、ファンの人に向けられていた。

『彼女が好きなのはわかった。でも好きだからこそ、節度は守るべきだよ』

彼女の言葉に何も言えずに走り去っていくファンの人。それを見送って、彼女がこちらを振り返る。

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