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□あべこべセクレタリー
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“秘書”とは――要職にある人に直属し、その機密の文書・事務などを取り扱う職。また、その職の人。
つまりは会社にとって、重要な役職なのである。
『あべこべセクレタリー』
「ほーら、早く起きて下さい!」
「ふぁ〜い…」
朝一番の私の仕事はこの人を起こすこと。低血圧な私よりも、何故か朝が弱い。
「今日の予定、頭に入ってます?」
「んー。この卵焼き、おいちぃ」
「…その態度、入ってないんですね」
一緒に暮らして1ヶ月、今だにこの人のペースに巻き込まれっぱなし。でも何だかんだで私も面倒みちゃってるんだけど。
「って、のん気に話してる場合じゃないですよー。支度しといて下さいね?私、車を回してきますから」
「りょーかい」
そうして待つこと30分、やっと自宅から出発。助手席では楽しそうに取り出した手帳を眺めていて。
「ふーん、10時から会議なんだぁ」
「あと午後からは三嶋さんが。次の企画についての相談があるので…」
話しているうちに会社に到着。これからやっと、本来の仕事が始まる。
「ちゃんと部屋に行って下さいよ?」
笑顔で私を振り回す。
「もちろんです、社長♪」
それが私の秘書、田村ゆかりさんである。
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