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□innocent starter
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「始まり」くれた君に そっと囁く
二人だけの約束を
『innocent starter』
雲一つない青空。きっとなのはだったら飛びたがるだろう、空が似合う子だもん。
だからなのはであるゆかりさんが旅立つには、相応しい日。
「水樹さん」
「あぁ、由衣ちゃん」
振り向けば笑顔の由衣ちゃん。ううん、さっきまではきっと泣いてたんだと思う。
ちょっとだけ、赤くなっていた。
「…水樹さんは泣かないの?」
「うん、ゆかりさんと約束したから」
“泣いちゃダメだよ?”
“ゆかり、心配になって眠れないから”
「本当に泣いたら、起きてくれるかな」
「へっ?」
「ううん、何でもないよ」
――思い出される、あの日。
ゆかりさんが病気に気づいた時は、もう既に手遅れだった。
“ゆかりね、死んじゃうんだって”
“ゆかりさん…?”
倒れたと聞いて慌ててきた病院で。まるで冗談を言うように、あっさりと告げるゆかりさん。
“そんでね…お願いがあるの”
我慢できずに泣き出した私の頭を撫でる、白く綺麗な手。本当は自分が泣きたくて仕方ないのに。私の為に、微笑んで。
“2人だけの約束だよ、奈々ちゃん”
私に残した、いくつかの約束。
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