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□I seem to have burned my lip.
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ぷるん、とした唇。

あ、なんかキスされたいかも――。



『I seem to have burned my lip.』



「……痛ぃ」

台本を読んでたはずのゆかりさん。でも今は眉間にしわを寄せて、自分の唇を触っている。

「どうかしたんですか?」
「んー、唇が切れた」

近づいて見てみれば、僅かに滲む血。
切れると話し辛いんだよね、声優にとって乾燥は本当に大敵。

「リップクリーム、持ってないんですか?」
「お家に忘れた。奈々ちゃんは?」
「たぶんあると思います。ちょっと待ってて下さいね」

鞄を開けてリップクリームを探す。たぶんポーチに入れてあったと――。

「…あの、ゆかりさん?」
「なーにぃ?」
「私の唇、何かついてます?」

ゆかりさんの視線が、痛い。いや嬉しいんですけどね?

「んっとね」
「はい」

青海苔、とかはついてないはず。それ以前に飲み物以外は口にしてないから、何もついてないと思う。


「ゆかりに、ちゅーしてほしいの」
「あ、はい。わかっ――…へっ?」

今、何て言いました?
なんかとても、ゆかりさんが言いそうにない言葉が聞こえたような…。


「だからね?…ちゅーしてほしいの」


聞き間違いじゃ、ないみたいですね…。


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