12/01の日記

20:42
新入社員・一護の受難
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受話器越しに聞こえる、一般に言えば甘く魅惑的な、けれども一護からすればおぞましい事この上ない声に、発言のオンパレード。
ぐわんぐわんと、最早許容量を超えた不快さに意識が遠退く。
ああ、いっそ意識を失ったならば、現状は多少なりとも良くなるだろうか、とやや現実逃避を仕掛けた一護だったが。

ゴッッ!!

唐突に、受話器越しにも関わらず、重く、大きく、凄まじい破壊音が響いた。
驚きと余りの音量に、一護は思わず受話器を離す。
先程まで、止めてくれと哀願したくなる程に淀みなく且つ止まる事なく戯言を抜かしていた藍染の、鋭く重い呻き声が耳を打った気がしたのだが、果たしてそれは一護の気の所為だろうか。
一護の手から離れて尚、暫し明らかな殴打音と悲鳴、そしてボソボソと聞こえる不穏なオーラを纏う声が受話器から響いた。
幸いにも、はっきりとは聞き取れなかった。(尤も、それ故により恐怖が煽られはしたが)
突然の出来事に、一護は呆然と暫し受話器を見つめていたが、それが不気味な静寂を纏うと恐る恐る拾い上げ、耳に当てる。
すると、絶妙なタイミングで何者かの満足気な吐息が聞こえ、一護は無意識に体を震わせた。
「長々と雑音を聞かせてしまって、すまないね」
硬直している一護を、仕方がない事だが受話器越しの人物はしらず、常通りの穏やかな、それこそ争い、暴力反対、寧ろそんなもの知りません、と言っているかのような優しい声が受話器から響いた。
普段なら安堵を抱かせてくれるのだろうが、先程の破壊音と勝者特有の吐息を聞いてしまった今、それすらも一護の恐怖を煽るばかりである。
しかも、社長である藍染の会話を雑音呼ばわりしている辺り、彼もなかなかにイイ性格をしているらしい。

あの上司にして、この部下あり。
やはり、変人の元には変人が集うんだなぁ。

などと、失礼(というか怖いもの知らず)な事を考えていると、電話の相手・東仙要が申し訳なさそうに言葉を重ねる。
「それで、珈琲豆の方だけど、どうすればいいかな?」
(一応あれでも)社長が言う通り、買っても支障はないけれど。
一護にとって有り難い言葉ではあるが、やはり藍染の事を言いたい放題である。

「(一応あれでもって……)て、いうか、さっきの音って……」
スルーしても良かったが、否寧ろしたかったが、流石に殺人的な破壊音を耳にしてはスルー出来ず、敢えて尋ねた。



〜続く〜
何時になったら終わってくれるだろう、これ。

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