* はじめ *
□プレゼント
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耳が痛くなりそうなほど静かな雪の夜。
まるで、さらさらと降り続く雪が世界中の音を吸い取っているようで。
「はぁ・・・。」
窓辺に座る少女が盛大な溜息を一つ。
「どうしてこんな日に?」
ブツブツと呟きながら毛布を身体に巻きつける。
「何もクリスマスイブに・・・。」
恨めしそうに外に目を向ければ白銀の世界。
雲の合間から時おり顔を覗かせた月が照らし出す世界は言葉には言い表せないほど美しい。
はずなのに・・・。
今の少女にとっては何とも辛い情景。
「風邪って・・・。」
とまた大きな溜息を一つ。
随分と前から楽しみにしていたクリスマスイブ。
大切な思い人と一緒に町のイルミネーションを楽しみ、食事をし・・・。
甘く、幸せなひと時を過ごすはずだった。
なのに・・・。
確かに昨日からあまり体調がよくなかった。
だから今日の為にと一日無理をせず、恋人との夜のお茶会も我慢して早く眠りにもついた。
それが良くなるどころかこんな高熱って。
いったい私が何をしたって言うの?
諦めきれず自寮のベットからまさに這いずって辿り着いた恋人の私室。
意識モウロウ
といった感じの私を見て眉間のシワを5割り増しにした部屋の主は無常にも本日の計画を全てキャンセルし、私を寝室へと強制連行した。
無駄と分かりつつ願いを訴えてみるも、問答無用とばかりに切り捨てられる・・・。
結局、泣く泣く彼の差し出す極上に苦い薬を流し込みベットへ潜り込むこと数時間、目を覚ますとすっかり夜は更け――
クリスマスまであと10分。
ベットを抜け出しヨロヨロと窓辺へと足を向ける。
そして、冒頭の盛大な溜息。
少女の憂鬱は増すばかりだった。
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