云いたかった言葉(完結済)
□云いたかった言葉 1
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君とのそれは、極めてプラトニックな恋愛だった。
{ 云いたかった言葉 1 }
1月の寒天の下、私はただ何となく公園のベンチに座っていた。
君との出逢い……違う。
君との再会は、本当に突然だった。
「あれ……もしかして、稚音(わかね)?」
する事もなく、ただベンチに座っている私に知らない男の子が声を掛けてきた。
「……」
見覚えは有る。
だけど…誰だったっけ?
「…覚えてないか」
私が黙っていると、その子は残念そうに呟く。
「僕だよ。…香椎 灯哉(かしい とうや)」
その名前を聞いた途端、私は全てを思い出した。
彼…灯哉は私がココに引っ越す前に住んでいた時の幼馴染みだ。
…と言っても、生まれてから4歳までだから、そんなに長い間とはいえないけれど。
「灯哉っ?!」
「そう。思い出した?」
頷くと花が咲いたように笑う灯哉。
「良かった」
「…灯哉、何でココに居るの?」
「稚音に会いに来た」
「は?」
「冗談だよ。稚音がこっちに引っ越したのは知ってたけど住所までは知らなかったし」
「…じゃぁ何で…?」
「此方に爺ちゃんが居るんだ…死にかけのね」
「そうなんだ…」
「で、知らないうちに死なれても困るから、月一で僕が様子見に来る事になってさ」
「へぇ。…あ、座ったら?」
そこまで話して、灯哉が立ちっぱなしだと気付いた私は灯哉に座る事を勧めた。
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