短編・バトン

□音と光
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「っふぅ、っ…」

小刻みに聞こえる微かな声。
彼はその上擦る自身の声が気持ち悪いという。
だが私にとっては何よりも勝る音楽。
指や手の甲を噛まないでもらいたい。もっと聞かせて欲しい。
何度もそう言ったのに、彼はそれでも恥ずかしいからと聞き入れてはくれない。
その意地っ張りなところも実は気に入っているのだが、流石に噛み切る前に止めさせなくてはならないだろう。

「駄目だ、噛むな成歩堂」
「…っ、っ、でも…」

頬を上気させ、潤んだ瞳で成歩堂がこちらを見上げる。
彼を童顔にさせる大きな黒い瞳が、私を射抜く。
本人はまるで意図していないであろうに、一瞬金縛りにあったように身体が硬直した。
呑まれる前にぐっと喉をならしわざと口元に笑みを履くと、恐ろしく綺麗な双眸に私は唇を近づけた。

「そんなに声を抑えたいのなら、私の肩でも噛めばいい」

囁きつつ、すっかり歯型のついた彼の手を取る。
あやうく噛み切って血が滲むところだった。
成歩堂は嫌がってか手を振り払おうとするが、ぐいっと力任せに握る。
それだけ感じている証拠だと思えば、これほど愛しい手はない。
握りしめ白くなった指先を口に含むと同時に、腰を揺すりあげた。

「ああっ…!」

ぐちゃりという粘着質な音と同時にあがる高い声。
どちらの音も私の欲を煽るだけの結果にしかならず、私は成歩堂の指先を舐めながらぐいと腰を動かし続けた。
突いてねじこめば柔らかく絡みつき、引けば行くなとばかりにぎゅうとしめつける。
ああ、たまらなく気持ちがいい。
単純にペニスを出入りさせるだけで腰が痺れて、頭が白く霞みそうだ。

「あん、ああっああ、はあ…!」

もう声を抑える努力は放棄したらしい。
両手を取られてガクガクと揺さぶられる状態では、確かに抑える術などないだろうが。
突かれる度に感じているのか、びくりと背筋から腰にかけて少し浮き上がる動作が愛しい。
もう既に二度精を吐き出した身体は敏感になりすぎているようだ。
私自身も成歩堂の中に一度注いだ。
最初は逸る気持ちと身体を押さえつけず、性急にバックから犯して。
そうして多少余裕のできた今、顔をみながらゆるりと責め立てては言葉をかける。
成歩堂のあげる声と濡れた瞳、もっとも私を刺激するその二つを堪能するために。
跳ねる身体を押さえつけてまた更に奥へとペニスを飲み込ませると、摩擦しすぎたのか結合した部分から泡がたった。
ぐちゅぐちゅと粘着質な音が一層大きくなる。

「あああぁ、ああ、いや、もうやだぁっ…」
「何が嫌だ? 気持ちよくないのか?」

成歩堂の表情や、触らなくとも透明な液体を零すペニスで、それはないとわかっていてもあえて問う。
我ながら意地の悪いことだ。
考えながらも快楽を求めて正直な身体は動きを止めない。
いや、止められない。
にゅちゅっとなんとも言えない音をたてながら円を描くように腰をねじ込むと、また成歩堂から一つ嬌声があがった。

「ちが、けど…っ、ああ、や、あ、もっ…」
「やはり嫌か、ならば止めるか?」

言葉で遊ぶのは主導権を欲しがる、しがない自尊心の現れでもある。
自覚している私は自嘲をこめてかすかに微笑んだ。
からかわれたと思ったのか、涙を目尻にためた成歩堂がきっと眉をあげた。
今度は強い意志を伴った瞳。
再度、射抜かれる。
黒い光に貫かれて私は思わず動きを止めた。

「ば、ほ、ホントに止めるなよっ…!つ、辛いから、早く、いかせて、御剣!」

掠れた声で訴えられ、挙げ句に無意識の催促なのか彼のほうから腰まで動かされて。
…暴走するなというほうが無理だろう。

「ああーー! ひい、ぃっああーー」

成歩堂の声が先程までと明らかに変わった。
突き破る勢いで何度も成歩堂の中を食い荒らし、乾いた音と濡れた音の両方を効果音として生み出す。
同時に固くそそり立った彼のペニスを、力加減のできない手でぎゅうと握った。
悲鳴があがるのも関わらず、幹を乱暴に擦っては柔らかい双球を揉みしだく。
挙句に精液を吐き出す小さな窪みに爪まで立てては、成歩堂の快感と恐怖で大きく見開いた瞳を見ながら嬌声を引き出していった。
酷いことをしている。
分かっていてももう理性など残っているはずがない。
もっと声を。
もっと私を感じている証を。
――これほどまでに溺れているのは、私だけではないという証拠を。
そして、私を、もっとその瞳で――愛しい光で、狂わせてくれ。

「あああああああ―――!!」

これ以上到達できないほど奥までもぐり込むと、痙攣するかのように震える身体。
びゅっと白濁が溢れ、私と成歩堂の腹へと滑る。
合わせて内部も今まで以上に締まり、絞られるように私も限界を迎えた。
大量の精が、すでに溢れかえっていた成歩堂の中を隙間なく満たしていく。
それでも私は満足せず、全てを押しこむよう数度突きあげた後、敏感な肌を抜くどころかぴったりと合わせた。

「あ、…っぁ、…」

気をやった後の成歩堂の小さな掠れ声。
もう意識が落ちる寸前のそれ。
何故かそれが私にとって、一番官能的に聞こえた。





―――――――――――
久々のエロ練習。
成歩堂に溺れる御剣視点でした。
 

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