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□ありがとう
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眼前に広がる白い世界。
昨晩から振り続けている雪は、まだ空からはらはらと舞い落ちている。

「うわ、すごい!」
「珍しくかなり積もったな。」

さくさくと音を立てながら、御剣と二人、公園を抜けようと歩いていた。
広場は一面真っ白に変化していて、いつもの通いなれた公園が一転、テレビでみる雪国みたいだ。
この天候だからか、時間が早いからか、辺りには人影が見えない。
その光景にぼくはわくわくした。

「誰もいない雪面に足跡つけられるぞ。」
「子供か君は。」
「いいだろ、たまには。ほら御剣も!」

妙にハイテンションになって、広い雪原に走り出す。
ぎゅっと雪が踏み固められて、僕の足跡が広がっていく。
御剣は呆れたような素振りであごに手をあてたけど、仕方ないなと呟いた後、僕を追いかけ始めた。

雪の上を走るなんて何年ぶりだろう。
本当に子供になった気分で嬉しくて笑い声をあげた。
少し走って、御剣はどの辺りか確認のため振り返る。

白い世界にあるのは、僕へ近寄る恋人と――二人分の足跡。

僕は足を止めて御剣が追いつくのを待つと、自分から抱きついた。

「どうした、鬼ごっこは終わりか?それとももう疲れたのか?」

ううん、と首を振ってますます囲む腕に力を込めた。
御剣は訳が分からないという顔をしていたけど、僕の好きなようにさせてくれた。
寒さから守るように御剣の腕も僕の背中に回される。

二人分の足跡――二人分の軌跡。
僕と御剣の歩いてきた道。
それが重なっている奇跡のような今に、すごくすごく感謝したい。

だから僕は素直に口に出した。

「ありがとう。」
「…?どういたしまして。」

困惑しながらも律儀に答えを返す御剣。

温かくて、幸せで。

これからもよろしく、とすぐ側にある頬に軽く触れると、雪のようにふわりと柔らかい御剣のキスが降ってきた。

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日記にも書きましたが、これだけ続けられているのは皆様のお陰だと思いますm(_ _)m
マジメなのも変なのもエロいのも混沌としていますが、これからもよろしくお願いします。

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