ちい姫さまの恋事情

□対 称
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私の顔って、そんな分かりやすいのかしら。


宮さまの女房と浮草を引き連れながら歩いた先に、良い香の匂いがする部屋にたどり着いた。
待機していた女房がするすると御簾を上げてくれる。


ふんわりと香る匂いは、どこか甘くて切なさを感じさせる。
なんという香を使っているのだろう?

私は顔を隠すのも忘れて、物珍しそうに部屋を見渡してしまった。



「ここが今日ちい姫に用意した部屋だよ」


「ありがとう…ございます。すごく良い香りがするお部屋ですね…」


「特別な部屋なんだ、ここは」


私を御簾のうちへと促した宮さまは、柔らかい笑みをこぼした。



「茴香姫の部屋。言っている意味、分かる?」


「うい、きょう姫…の、部屋?」



茴香……、どこかで聞いたことのある響き。
うーん…どこだったかな…?


「その顔だとまだ分かっていないみたいだね。じゃあこう言ったら分かるかな?
近代史に残る男装の麗人、"薫少将"こと、茴香姫」


「薫少将…。あ…!もしかして、その方のお使いになられていたお部屋なのですか!?」


「気付いたみたいだね。そう、僕のおばあさまの部屋だよ」


近代史に残る、男装の麗人なんていったら…今上帝より四代前の皇后さまのこと。
そんな恐れ多い方の部屋に案内するなんて、宮さまったらどんな神経しているのかしら…!

私なんかが入れるような場所ではないはずなのに!




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