ちい姫さまの恋事情
□宮と督
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こんなことなら浮草を側に侍らせておくべきだった……。
今日に限って、一人でも大丈夫だと見栄をはってしまったのだ。
浮草は心配してたのに。
相手が体裁を考えない宮さまなこと、すっかり忘れていた。
「……おめかししてくれなかったの?」
ずい、と寄ってきた顔が悲しそうに歪む。
私はすぐに顔を逸らした。
「……おめかしする必要なんて、ないからです」
「…そう、残念。許してくれてはいないみたいだね」
宮さまは一層切ない表情になったけれど、瞬時に笑顔になった。
彼の手に促されて目を合わせられる。
「でも。そのままの君も、可愛いよ」
「……〜っ」
な、なんなのこの人……!
あまりにも率直に言われた言葉は、私を真っ赤にさせる。
男の人に面と向かって口説かれたことがないから、免疫もあるはずがない。
だから恥ずかしくて顔に熱が上ってしまうのだ。
「……心にもないこと、言わないで下さい」
「本心だよ、嘘じゃない。あの時のことは許さなくていいから、俺を避けないでくれると嬉しいんだけど」
「なら平気で可愛いとか、言わないで下さい」
「どうして?本当のことなのに」
「……恥ずかしいから、です」
人が赤くなるのを堪えて言っているのに、彼の顔は嬉しそうにしているのが見て取れた。