ちい姫さまの恋事情

□宮と督
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「……ごめんね?」



私が黙りこくったままだったから、宮さまが優しく謝罪の言葉を呟いた。

甘い、囁くような声音。

御簾越しでも分かる、高貴な身分ゆえの近寄りがたい雰囲気。
でも、表情は凄く柔らかい。


「…………。」


彼の持つ独特の雰囲気に気圧された私は、やっぱりまだ何も言うことが出来なかった。



「……ちい姫。お口をつぐんだままだったら、許してくれているのか分からないよ」


宮さまの口からため息が零れる。

このままでは失礼になる。
自分の身分を弁えなければならないのに。


「それとも…………」


ふと、目の前の影が大きくなったかと思えば、秋の風が通り抜けるように御簾がめくれあがる。
それはごく自然で、私が息をするのを忘れるくらい。


「僕が勝手に尋ねてきたから、恥ずかしがっているのかな」


気づいた時にはもう、宮さまと私の間には隔たりである御簾も几帳もなかった。
ふわりと宮さまの香が薫って、美しいその姿を私と目線が会うように腰を屈めさせた。


「………っ」


「一度顔を見ているのだから、御簾なんていらないよ。そんなに驚いた顔をしないで」


「…うき…、むぐ…っ」


「しー。折角二人きりなんだから、誰も呼んじゃだめだよ」


宮さまの骨ばった手が、私の口を塞ぐ。


なんか……こんなこと、前にもなかった…?

まさに出会った時と同じ感覚。


やっぱり、要注意人物だったんだわ…っ。




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