ちい姫さまの恋事情

□宮と督
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「お久しぶりだね、ちい姫」



御簾の向こうに見える顔は、つい最近参内した時に見たものと変わらず美しかった。



日が少し傾き始めた頃、彼は文にあったとおり、私を尋ねてきていた。

彼はおめかししてね、なんて書いていたけど私はいつも通りで。

ただ上品な香が焚きしめられた直衣を纏う相手の方がぬかりなくて、もう少しちゃんとした袿を選べば良かったなどと悩んでしまった。


仮にも彼は先帝の皇子である三の宮。
宮さま相手に普段の部屋着ではあまりにも失礼だったかもしれない。

髪も、少しだけ気になるし。

……気になりだしたらきりがない。



「どうしたの、黙り込んじゃって」


廂間まで入り込んだ有明の宮は、言葉に詰まる私に向かって声をかけた。


「まだ、怒ってる?」


「…………」


宮さまが言っているのは、あの時のことだろう。

あの時は衝撃的過ぎて思わず泣いてしまい、泣き顔も見られた。

名前も言いたくなくて、何も言わなかったらいつもの"ちい姫"と呼ばれて。


怒り…と言うよりも恥ずかしさが今になってこみ上げてきて、何を話せば良いのか分からなかった。




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