ちい姫さまの恋事情

□鬼灯道
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「なにごとでしょう?」



急に止まった牛車の中は薄暗くなってしまった。
立ち上がった女房が物見を開けたことによって、風で消えてしまったようだ。



見えない外から、何やら物音がする。


木の葉が擦れあう音、牛の尾払いの音、


……幾人かの地面を叩く足音。



「喜助(きすけ)、どうしたのですか!?」


女房が物見を覗き込み、外にいるであろう牛飼い童を呼ぶ。
いつもなら近くに控えているはずで、呼びかけには必ず応えるはずだ。

けれど応えないということは、彼に何かしらあったということだ。


私は突然訪れた緊迫した空気に気圧されて、そばにいた女房の裾を掴んだ。



「う、うわぁああ……っ!!」


「喜助!?」



何かどすっ、という音が聞こえ、少年の絶叫が静寂だった夜の暗闇に掻き消える。
月が雲に隠れたためか、あまりにも暗すぎて視界がきかない。


女房も訳が分からず動揺しているのか、必死に外を確認しようとしている。





いったい外で何が起こっていると言うの…!?




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