ちい姫さまの恋事情
□鬼灯道
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「女御さまと羽衣子姫さまは、あまり似ていらっしゃらないのですね」
「よく言われるわ。だってわたくしは姉と兄の異母妹だもの」
「まぁ、そうとは知らずに出過ぎた真似を…」
「いいのよ、気にしないで」
この時代、異母兄弟なんて当たり前。
母親の身分で子の待遇が決まるものだ。
私の母は父の愛妾で、姉さまと兄さまは正妻から生まれた。
私の母は元々体が弱く、私を産むとすぐに息を引き取り、私は父の正妻である北の方に養女として迎えられた。
母のいない私を、北の方と二人の姉兄はとても優しくしてくれて今日まで甘やかされて育ったのだ。
事実、愛されすぎるくらいに。
家族は好きだし、産みの母はいないけれど寂しくはない。
「同母腹の兄さまは姉さまとそっくりだけどね、性格が」
「右兵衛佐(うひょうえのすけ)さまでございますね。それほど似ていらっしゃるのなら、一度拝見しとうございますわ」
「会ってみると良いわ。わたくしに対する反応が姉さまと同じだから」
「それは、容易に想像できますね」
思い出し笑いをするように二人で顔を見合わせて肩を震わせる。
そんな和やかな雰囲気は、牛車が止まったことにより大きく様変わりしてしまった。