ちい姫さまの恋事情
□政の恋
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「何もありませんでした……」
「本当に!?」
「ほ、本当ですからあまり揺らさないでくださ……」
見え透いた嘘を吐いたが、あまりにも姉さまが肩を揺らすために平静でいられない。
…気持ち、悪い。
「女御さま。その辺にしてそろそろ夕餉になさいませ」
「羽衣ちゃんは、どうなるの!?」
「大納言さまからのご了承はすでに受けておりますゆえ、今宵はお帰りになれません。宜しいですね、羽衣子姫さま」
いつの間にか連絡をとっていたらしく、今日は帰らなくても良いらしい。
その言葉に一番輝いた顔をしていたのは姉さまだった。
「羽衣ちゃんも一緒に夕餉を頂くの!羽衣ちゃん、今宵は一緒に寝ましょう!昔みたいに、枕を並べて!!ね?」
頷くこと以外は許されないようだ。
無邪気に笑う姉さまを見て、私ははいと答えた。
何がどうであれ、姉さまと一緒に寝るのは久しぶりだ。
私も楽しみなので、今日はここで一晩過ごすことにした。
でも、帝はお渡りにならないのかしら。
「主上は今宵、桐壷さまをお相手なさっていますから、ご心配なさらないでくださいませ」
松風に訊いたら、そんな言葉が返ってきた。
いくら姉さまがご寵愛を受けていると言っても、そう毎日はお相手なさらないものみたい。