ちい姫さまの恋事情
□政の恋
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「あの有明の宮さまにお会いして、よくもまぁ喰われずに済みましたね」
「…………喰われずにって?」
「有明の宮さまは、女なら誰彼構わずお相手なさるのよ」
横から、姉さまが言う。
「お相手……」
「簡潔に申しますと、夜のお相手ということですね」
……。
それくらいなら私にも分かる。
女なら誰でも相手にして、喰われる…。
だからやけに女慣れしていて、平気であんなことをするのだわ……ということは。
私に襲うほどの色気がなかったということ!?
「わたくしの羽衣ちゃんが無事で良かったわ。あんな色好み、好きになってはだめよ羽衣ちゃん」
「……誰があんなやつ、好きになるものですか」
怒りが沸々と沸き上がってくる。
乙女の貞操を奪われて-胸を触られただけだけど-、挙げ句ちい姫呼ばわり。
あの整いすぎた顔を思い出しただけでも、つねってやりたいわ。
「ほらほら、羽衣ちゃーん」
「聞こえてないみたいですね。もしかして、有明の宮さまと何かあったのでは」
「うそ、羽衣ちゃん、何があったの!?」
「ね、姉さま…」
がくがくと肩を揺らされ、意識を無理やり姉さまに向けさせられる。
さすがだわ、姉さま……。