ちい姫さまの恋事情
□政の恋
1ページ/10ページ
気がついたら、私は姉さまのいる登華殿に連れ戻されていた。
ずっと放心状態だったみたいで、松風が私の無事に安心する顔も見れなかった。
気づいたきっかけは、姉さまが私をきつく抱きしめたから。
あまりの息苦しさに、窒息死しそうなくらいだった。…言い過ぎかしら。
「いきなり有明の宮さまに連れて行かれるんですもの、大変心配致しました」
「松風…ごめんなさい」
「ご無事でなによりです」
松風は私の手を取り、頬を緩める。
余程心配をかけたのだと分かり、少しだけ罪悪感を感じた。
…って、私は悪くない。
全部、あのナントカの宮さまが私を連れて行ったから悪いんじゃないの。
今でも信じられない。
あんな軽率な態度をとる人が、宮さまだなんて。
見た目は美しかったけれど、宮さまだからってあんなことしていい訳ないわ。
あの手触りを思い出すだけで鳥肌がたった。
「羽衣ちゃん、大丈夫?」
姉さまが私の顔を覗き込み、頭を撫でてくれる。
松風からこのことを聞いていたらしく、案の定姉さまも探そうとして止められたようだ。
私は笑って、頷いた。
「それにしても……」
松風が顎に手を当て、首を傾げている。
それから私を見た。