ちい姫さまの恋事情
□参 内
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あれから私は参内にそなえて湯浴みをさせられ、事細かに清められた。
早朝、「女御さまからのお迎えの使者が参られておりますよ」という浮草の声で起こされた私はせっせと着替えさせられた。
幾重にも重ねられた単の上に裳を重ねて正装をする。
裳着をして以来の正装だから慣れなくて、長い裾を踏んでつんのめった所に、「お気をつけくださいまし、ちい姫さま」と浮草に皮肉付きで注意された。
浮草のああいう皮肉屋なところ、嫌いだわ。
女房としては一番の理解者なのだけれど。
「姫さま、重たくはないですか?」
私より少し背の小さいささらが、心配そうにきいてきた。
「大丈夫よ、ささら。これくらい着こなせないと、立派な女性にはなれないわ」
先ほど躓いていたのはどこのどなたさま、と浮草の皮肉を待ち構えていたが、どうやら彼女は姉さまがよこされた女房と話しているようだ。
こちらを見ては何か話している。
「きっと姫さまを案じて、大事がないようにとお願いしているのですよ」
私の表情で察したささらが、にこりと笑った。
この子は本当にいい子で困る。
将来、誰かに騙されないか心配だ。