其れ華番外編集
□初めに香る華の如し
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「は、初めまして!初香と申します」
私はどもりながら、頭を下げた。
お父さま以外の男の人とはあまり話した事がなかったから緊張する。
でも、薫と名乗った兄さまは不思議と男らしいとは感じなかった。
美しい黒髪に、整った顔立ち。何より瞳が大きくて、吸い込まれそうなほど綺麗だった。
「私の顔に何か付いてる?」
「いっ、いえ!」
暫く見つめていたものだから、兄さまは首を傾げて訊いてきた。
そういう所作も、気品が漂う。
「初香、私たちは兄弟なのだからそう畏まらないで。仲良くしよう」
そう言った兄さまは私の頭を優しく撫でてくれた。
仲良くしてくれるの?
…でも、
「私は卑しい身分です。仲良くしたら他の姉さま方に怒られませんか?」
私は俯き加減に視線を移した。
兄さまの目が見れない。眩しすぎて、私が霞んでしまいそうになるから。
「…姉上方が、初香を嫌っているの?」
「…っ、違い…ます」
「嘘は吐かなくていいよ。私も姉上方の品の無さには呆れているもの」
兄さまは見えもしない姉上方のほうを見て、ため息を吐く。
「私も初香を嫌うと思ってるの?」
「……っ」
「嫌わないよ」
答えられずにいた私に向かって、兄さまは微笑んでくれた。
本当の兄さまなんだって、感じさせてくれた。
「泣かなくたって」
「だって…、初めてなんです…ここに来てから優しくしてくれた家族は。寂しかった…」
「大丈夫、私がいる。だから泣かなくて良いんだよ」
涙を拭う兄の手の温もりが、私を安心させてくれた。