Gradio's Hero
□様々な恋のカタチ
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あの後、無事にティア達と合流出来た一行は急いでマデレットアカデミーへと戻った。
無論、合宿は中止だ。
モアは医療室で処置を受けると、大事をとって三日は休ませることになった。
学校に帰ってからというもの、まだ目を覚まさずにいるのだが。
前々からモアの体は病弱で、激しい運動などは控えなければならない。
それを知っていたのは同室のティアだけだったのだが、迷子になっていたために誰もモアの体の変化に気づけなかった。
「本当にごめんなさい…!!私が勝手に行動したばっかりに…っ」
女子寮のティアとモアの部屋。
ティアは手を合わせてアウトに謝った。
自分が一番モアの事を知っていたのに、と。
「謝る相手が違うだろ、ティア」
アウトは眠るモアを横目で見て、ティアの頭を撫でた。
ティアはくすぐったそうにうん、と頷く。
「モアのことは大丈夫だから、先生のとこ行けよ。呼び出されているんだろう?」
「あ、そうだった。行かなきゃ」
ティアはモアが寝ているベッドに屈み込む。
モアの髪をかきあげてごめんね、と耳元で囁いてから部屋を出て行った。
「んだよ」
アウトは見られている視線に気づき、その視線の持ち主を睨みつける。
部屋の傍らに立っていたキプトは、少し微笑んで壁にもたれた。
「いや…?ただアウトは出て行かないのかなーって思って」
「うるさい。お前とモアを二人きりにさせられるか」
「……ティアは良いのか?」
「……〜っ、それもだめだっ!」
「残念。だが俺はティアを追う。モアをよろしくな」
「あ、ちょ…っ!」
キプトはにやりと笑ってさっさと部屋を出て行く。
追いかけようにもモアをひとりきりにさせるわけにはいかない。
アウトはため息をついて、ベッドの横にあった椅子に座り込む。
その時、モアの可愛らしい寝顔が僅かだがしかめられた。
アウトが驚いて様子を見ていると、モアのビリジアンの瞳が瞼から姿を現した。
「あ…うと?」
「モア!気付いたか。…具合はどうだ」
「えぇ……良好ですわ。でも、どうしてアウトが……?」
モアは直ぐに状況を呑み込んだらしく、アウトに微笑んで見せる。
そして部屋を見渡していることから、無意識にティアを探しているのが分かった。