其れ華番外編集
□添木さんの秘め事
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「添木、そわそわしてどうしたの?」
ある晴れた日の昼下がり、後宮にある藤壺の殿舎でその主が女房に声をかけた。
女房の名は添木。
藤壺の女御である茴香姫の腹心の女房だ。
その日の添木はいつもとは違い、どこか落ち着きがなかった。
それに気付かない茴香ではないので、初めはおかしく思いながらも聞かないでおいたのだ。
だが時間がたつにつれ、治まらないのが気になって結局聞いてしまった。
「そんなこと、」
「添木はいつもどおりでいるつもりみたいだけど、わたくしまでは騙せないわ」
「ひ…姫さま……」
もう何年この姫と過ごしてきただろうか。
腹心というだけあって、お互いの様子には何でも気付くし、放ってはおけない。
添木はこの姫さまには適わないなぁ、と思うのだった。
「……誰にも仰いませんか?」
「そんなに内密なことなの?」
「とくに……穂高殿には知られたくないのです」
「……それは…」
「それが守れるのなら、お話します」
添木が口元に人差し指をあてたので、茴香は頷いた。
恋人には秘密にする内容……を、自分に共有できるか少々不安になりながら。