其れ華番外編集

□待ち人、来ず
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「本当に大丈夫なの?添木」


「えぇ、大丈夫ですから茴香さまは夜鷹さまとお二人でお過ごし下さいな」


「一人では心配だわ…」


「添木、何かあったらすぐに連絡してくれ。あいつならすぐ来ると思うが」


「大丈夫です。ほら、混んできましたよ」



人混みの中、添木は主とその恋人の背中を押して送り出した。
心配そうにちらりと振り返る二人に苦笑しながら、彼女は境内の片隅へと場所を移した。


そう、今は初詣に来ている。
茴香と二人して振袖のおめかしをして、近場の神社へと足を運んだのだ。

茴香の恋人、夜鷹はすぐに待ち合わせ場所へと現れた。
だが添木の待ち人は、夜鷹曰わく仕事の都合で少しばかり遅くなるという事だった。


初めのうちは一緒に待っていてくれたのだが、せっかくの初詣を台無しにして欲しくないと、今し方二人を参拝へと進めた。


昨夜は雪が降ったし、今日も少しだけ天気が悪い。
添木は空を見上げて、苦く笑った。


もう、待ち続けて一時間になる。

茴香と夜鷹は送り出したばかりだし、この混雑の中なので再び落ち合うには後30分はかかりそうだ。


…彼は来ないのかもしれない。


ふとあらぬことが過ぎったので、添木は思考を振り払った。
彼が今まで連絡もなしに遅れてきたことはなかったし、すっぽかされたこともない。
変な事は考えないようにしようと気持ちを持ち直したところで、すぐ近くに「おみくじ」と書かれた箱を見つけた。




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