其れ華番外編集

□きらきらの恋
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好きでした。


あなたを好きでいられて幸せでした。





の恋。








その知らせを聞いたのは、東宮さまが帝へ即位した日のこと。
わたくしは、何だか嫌な予感がしてた。
…それがあたっただけなの。



「吉良姫さま、大変でございます!」


いつも落ち着かない佳苗がいつも以上に慌ててたから、とても印象に残ってる。



「どうしたの、佳苗」


「と…っ主上が、新しく女御さまをお迎えになりました!」


「そんなの、聞いているわ」


「違うんです…っ」


それは、思いもよらない知らせだった。







「少将さまが、茴香の君…?入内する…?」


意味が分からなくて頭が追いつかない。
男と思っていた人が女だったなんて。


かの少将さまの顔が浮かんだ。


大きくて黒く澄んだ瞳が今でも記憶に焼き付いている。
吸い込まれて、ずっと見ていたいと思わせる瞳。


それに姫君のような愛らしく可憐なお顔。それだけで男も女も虜になってしまうだろう。



―――――女だとて、不思議はなかった。



どうして気づかなかったの。
わたくしは本人に、あんなお願いをしていたなんて…。


"茴香の君を、探して下さい"


少将さまは頷いていた。
わたくしはそれを真に受けて。信じていたの。








主上が桐壷へ訪れて下さったのは、少将さま…茴香の君が入内して間もない頃。
それまで、まったく音沙汰もなかったのだから覚悟はしていた。


久しぶりにこちらを訪れて下さった主上はあまり浮かない顔をしていらっしゃる。
それは、わたくしへの罪悪感からなの?



「主上…、お久しぶりでございます」


おかしいの。
わたくしは、主上の正妻なのに、どうして久しぶりなの?


どうして顔が見れないの?



「吉良姫…元気で、何より」


響く声は、わたくしが好きな声。
添伏しを務めたころからずっとお慕いしてたあなた。



今聞いた声は、…遠いのね。




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