ちい姫さまの恋事情

□鬼灯道
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―――……昨晩、盗賊が出たようですよ


――盗賊!?


――この盗賊は乱暴で、狙いは貴族の牛車なのだそうです。被害にあった公達などは、酷いときには殺されてしまうそうなのですよ。




内裏へと向かう道中の、松風の言葉。

あの時は半信半疑で、まさか自分がこんな目にあうとは夢にも思わなかったから気にとめていなかった。



ちゃんと覚えていて、気をつけていればよかった。

今になって、後悔しても遅いのに。



「ほおずきどう………道楽、」


「聞いたことぐらいあるだろ?……お姫さんじゃあそれもねぇか」


「楽兄、何雑談してるんですか」


「伸弘(のぶひろ)」


詰め寄る男の後ろから、松明を持っていた少年が声をかけてきた。

同じ盗賊の一味だと思うが、それにしては繊細で華奢な体つきの少年だ。
表情のない顔をしている。


「いやぁ、お姫さんが俺のこと知らないからさぁ」


「そんなことよりも、さっきの牛飼童が大内裏へ向かって逃げました。いつ検非違使のやつらが来てもおかしくない」


「そいつぁやべぇ。分かった、他の奴らは退散しろと伝えておけ」


「楽兄も早く」


華奢な少年は道楽を気遣うように見ると、どこかに行ってしまった。

また薄暗くなる牛車に、私と女房とこの男だけ。




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