ちい姫さまの恋事情

□鬼灯道
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「あ、あなた方は何者ですか…っ!!」


私の手を強く握って、勇気を出した女房が震えながら男に言った。

男はにや、と笑ってその体格には狭いであろう牛車の中に乗り込む。

反射的に後ずさる私たち。


「何者に見えるか?そんじょそこらの貴族かなんかに見えたらその目を疑うぜ」


「み、見えるものですかっ!今すぐここから降りなさい、姫さまの御前から、今すぐ!!」


「あ?お前がお姫さんじゃなくてこっちのちびがお姫さん?」


「ち、ちび……!!姫さまになんてもの言いを…っ!」



男の視線が私に向けられ、なるほどと頷いた。
着ている装束の質の高さから納得したのだろう。


それにしても、こんな輩にまで私は姫と見られないなんて…!!


恐怖か呆れからか声が出せないでいる私は、ただ男を見ることしか出来ない。

男はその手に抜き身の太刀を持っている。
先ほど半分にすっぱりと切られた簾を見ると、その切れ味の良さが嫌でも分かった。

だから下手に逆らえない。


「そうか、こっちがお姫さんか。すまないなぁ。お詫びに俺の名を教えよう」


またずい、と詰め寄るから背中に堅い物があたる。
もう後ずされない。



「覚えておけ、俺は今をときめく京の大盗賊"鬼灯道"の頭。道楽(どうらく)さまだ!」




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