Gradio's Hero

□様々な恋のカタチ
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先生に呼び出された、と言ってもティア自身は何かをしでかした覚えはない。
以前呼び出された時はデモストルームを危うく破壊しそうになった時だったか。

それほど力をコントロール出来ない生徒は見たことがありません、と生徒指導の先生に怒られた。


「失礼しまーす……」


コンコン、とノックをして職員室に入る。
広い職員室の中には職員が2、3名ほどしかおらず、右の隅にいた女性がティアに向かって手招きをしていた。
ティアがそこまで足を運べば、その職員が3ヶ月目のデモストで審査の際にいた教師だった事が分かった。


「あのぅ…私、何かしてしまいましたか?」


ティアが怯えるように質問すると、教師はふ、と笑みを零した。


「あら、私そんなに怖そうに見えるかしら?」


てっきり叱られると践んでいたティアは拍子抜けして、体の力が抜けた。


「違うわよ、ティアラル。あなた、特急クラスの魔獣を使役しているそうですね。何故すぐに言わなかったの?」


ぎく、とティアは顔をひきつらせた。
すぐに言わなかったのはモアの事があったし、信じて貰えないと思っていたからだ。
今までの自分が、落ちこぼれ過ぎたためだ。


「誰から聞いたのですか?」


「キプト・ラインよ」


やっぱり彼か。
ティアはため息をついた。


「あなたの魔獣は火伯ですってね。たった2P(パス)のあなたが、特急クラスの魔獣を使役する事ができるなんて凄いわ。今年の生徒は今までの生徒より優れていることを誇りに思います」


これで3人目よ。先生は呟いた。
ティアは自分が密かに蔑まれたことよりも3人目、という事が気になって教師の机に身を乗り出す。


「3人目、ということは私以外に誰が…?」


「あなたのお友達のキプト・ライン、それにバジル・R・ハークよ」


教師の言葉を聞いたティアは、身近な人物が才気ある人物ばかりだと認識して気後れしそうになる。
キプトは分かっていたが、バジルまでもが。

バジルは普段はあどけないのに、内に秘めた力があるのだ。
それには納得できた。


「驚くわよねー。バジル・ハークはまだ入学したばかりなのに」


「…先生。本題に入りたいんですが、用件ってそれだけですか?」


「あぁそうだったわね」


教師が思い出したように、机の引き出しから何かを取り出して机の上に置いた。
きらりと室内の照明に反射したそれは、Bと書かれたバッジだった。





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