題目
□脚光を浴びる事はないけれど
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『大丈夫?』と、晴家には苦笑された。
――わかってる。
景虎には、とてもじゃないが言える関係ではない。
……それでも、
“直江は俺を受け入れてくれた。”
それが、重要なんだ。
""""""""脚光を浴びる事はないけれど""""""""
「んっ……ゃぁ、……なが、ひで……ぇ」
懸命に声を抑え、潤む鳶色がこちらを責めるように睨んでくる。
――やばい。
生唾を飲むとはこの事か。
今の直江の視線、表情、姿はどれも扇情的で、千秋の欲を体現化させるには十分な要素を持っていた。
「“嫌”?ジョーダン言うなよ、直江。景虎が向こうに居るからって…興奮してんだろ?」
スラックスの中、直江の下肢を直に探り、その昂ぶりを確かめる。
ドア一枚隔てた向こうの部屋には、今後の対策を練る景虎がいた。
直江はそのドアに押しつけられ、千秋によって恥辱的な行為を強いられている。
「……っは、馬鹿。バレたら……ぅんっ、……ど、する」
時折漏れ出る嬌声を辛うじてやり過ごし、少しずつ、しかし確実に追い詰めてくる千秋を見やった。
独占欲の強い主人の目を掻い潜って付き合っているのだ。……もしこの関係に気付かれたら、二人ともどうなるか知れたものではない。
――それを、直江は恐れていた。
「バレたらバレたでその時だろ。真っ向勝負。受けて立ってやる」
だが、やはりというか、千秋の方はこの状況を楽しんでいる。
その証拠に、彼の手は止めるどころかわざと下肢から耳障りな水音を立て、聴覚からも直江を犯していった。
「んぅ……っ、ふぁ……、あ、なが…ひで」
互いに声を殺しての密事。
必然的に顔を寄せ合わせる形になり、千秋の心地好い低音が近くにある事で、余計に直江の快感は増長していった。
「イけよ。大丈夫だから」
誘うような、宥めるような言葉を掛けられた直後、呼吸を奪われる程の深い口付けを与えられる。
「………っ―――っふ」
それと前後して千秋から絶頂を促され、されるがままその手に白濁液を出した。
ギッ…
「っ!?」
達した事で身体の力を抜いた瞬間…、背中を預けていたドアが軋んだ音を鳴らし、直江は我に返る。
――不自然な音を、彼は不審に思わないだろうか?
不安から身体を強張らせる恋人に、男は思わせ振りに笑った。
「バレたかな?」
――第3者が来るまで、あと数秒。
fin