四天夢2

□大人になっていく君と
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「ひかる、ひかる」


「なんですか」


「トキメキが足らへん」


「…はぁ?」


また性懲りもなくアホなことを言い出した先輩に、思わず雑誌から目を離して見てしまった。
アホな発言とは裏腹に顔は至って真剣だ。
こうなればこのアホンダラ先輩は止まらないだろう。
ああ、俺の時間が。


「あんな、みくちゃんに彼氏ができてん。そんでな彼氏の話しすんねん」


「あー、はいはい。よかったっすね」


みくちゃんて誰やねん。
そんなことを思いながら、適当に返事をする。


「…楽しそうにな、話すねん。元から可愛え子なんやけど、もっと可愛いらしゅう笑うねん。花飛んでるみたいに」


相変わらずこの先輩の表現は幼いが、要約すれば『友達に彼氏ができて、のろけてる』ということやろう。


「ほわほわって笑うて、目ぇ細めて照れるねん。…うちな、そんな笑い方したことないねん」


さっきの真剣な表情から、少し寂しそうな表情に変わった。
このお気楽な先輩もこんな顔するんやな、と場違いにそう思った。
適当にしていた返事も、今は出てこない。


「んでな、それを白石に言うてん。うちもそんなふうに笑いたいわぁ、って」


なんてことをこの人は相談しとるんや、この人は。
しかも部長なんかに。
変なこと言われんのがオチやで。


「したら白石が『それは大事に思うとる異性と一緒におったら自然にできるんやで』って言うてん。その人な、ひかるやねん」


「ぶっ…はぁ!?」


「なぁ、ひかるとおったらあんな風に笑える?うちも」


いきなりの告白に、危うく自分のキャラを壊してしまうくらい驚いてしまった。
あんた気付いとるん?それってほぼ愛の告白やで。
まぁ、アホンダラ先輩は例の如く気づいとらんのやろうけど。
今やってめっちゃ純粋な顔して、顔かしげて俺の反応見とるし。
でもその鈍感で幼稚な先輩にそない言われて内心めっちゃうれしい俺も、ほんま同じくらいアホやな。


「せやな、俺とおればできるんやないですか?」


その瞬間先輩は、ほわほわと、目を細めて、恥ずかしそうに笑った。




大人になっていく君と

俺とおればそんなもん
なんぼでも感じれますよ






END


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