SSサンプル部屋

□御剣×巴ver.2
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「御剣君…。あなたがなんと言おうと……ムダです。私の気持ちは、変わりません。」
「グッ……」
巴は、なにも御剣を傷つけるつもりなどなかった。傷つけたくないからこそ、自分から遠ざけようと必死なのだ。
しかし御剣も御剣なりに必死だった。簡単に退き下がる気はない。

御剣は巴の肩を抱くと強引に引き寄せた。
よろけそうになった巴をしっかりと抱き止めると、髪にキスした。
そして、言った。
「嫌なら嫌と言ってください。」
巴は声が出ない。なぜか体に力が入らない。ただ心臓がドクドクと鳴っている。
「嫌でないのなら……このまま、続けますが……いいですね?」
「………………」
巴は逃げることも、抵抗することもできなかった。
動くことも、声を発することもできない自分に驚きながら、御剣の顔が接近してきた。それを止めることができなかった。
巴は目を閉じる。

(御剣君とは、不思議な縁だと思うわ……違う出会い方だったら、もしかしたら……
いいえ。考えても、仕方のないこと……
もし、御剣君と私が親しくなれたら、茜は喜ぶかしら。それとも、やきもちを妬くかしら。
まだ子供だけれど、あの子だって年頃になれば、真剣な恋愛の一つや二つ……)
御剣の接吻があまり巧みではなかったせいか、巴はつい、物思いに耽ってしまった。しかし、すぐに現実に返った。
(……違うわ。…なにか、違う…)
「違います御剣君。こうするの。」
「すいませ……! んっ、ム…………」
いつしか巴のほうが御剣をリードしていた。


(中略)


巴が検事局を出ると、目の前に人影があった。
「さっそく、新天地でお楽みを見つけたようだね…。
あの赤いボウヤが、お気に入りのペットかい。」
首席検事に就任してから、巴は警察局に出向くことはまずなかった。罪門はここで待ち伏せていたようだ。
「やめて。あなたにそんな話をされる筋合いは……」
「そのつれない態度。とぼけているのか? それとも、オレが狙っていないとでも思っていたかい?」
「!」
「お互い異動で離れちまったが、オレ達は仲間だった…それは変わることはないだろ。異動したからって、終わる関係なんかじゃ……」
「…人は誰も昔に戻ることはできない。それが答えよ。新しい道を進むしかないの。私もそうするし、あなたも頑張ってほしいわ。」
「巴!」
「体に、気を付けて…さようなら。」
巴は冷酷に罪門に背を向け、歩き出した。


(中略)


巴は御剣に抱き締められると、まるで動けなくなった。
腕を伸ばし、御剣の体を押し退け、抵抗しようと頭では考えているのだ。だが、体が命令を聞かない。
このまま動かなければ、御剣にキスをされてしまうと解っているのに。
巴は苦しげな顔をしていたらしい。顔を間近に近付けた御剣にとがめられた。
「なぜ……そのような、辛い顔をなさるのです!
嫌ならば、なぜ、抵抗されないのですか。拒絶なさらなければ、私は、気持ちを受け入れてくださったものと……」
「御剣君……。私、私は……。」
巴は震える指先で顔を覆った。
「ごめんなさい……。もう、やめて……」
「宝月首席検事……!」
「お願い……、どうか、もう、私に近づかないで……!」

部屋の外に逃げ出した巴は、立ち止まり、呼吸を整える。
いったい、自分はどうしてしまったのか。
いつの間にか御剣に惹かれつつあるというのか。それも、すでに自分をコントロールできない程に。
SL9号事件の裁判のことで、御剣には多少なりとも負い目がある。御剣の誘いを断りにくいのはそのせいだ、と思っていた。
だがしかし、あの裁判に臨む際、自分は悪魔に魂を売ったのだ。地獄の果てまでも秘密を守り通す覚悟だった。
そう思えば、御剣の誘い「ごとき」、無視すればよいではないか。
困ることなどないはずである。


(中略)

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