SSサンプル部屋

□みぬき男の娘設定イントロこんな感じです
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大粒の雨が窓ガラスを叩き始めた。雷鳴が轟く。
真っ暗な空と轟音に包まれた窓辺に、幸せが舞い降りた。
今、一組の夫婦の間に一人の赤ん坊が誕生した。

母の名は優海。父の名は影郎。
外は恐ろしい雷雨であったが、我が子を産んだばかりの女性には窓の外の出来事などまるで気にならなかった。
彼女の心を安らかにさせるものは、母親と同じベッドで、母親の顔の横ですやすやと眠る玉のような男の赤ん坊だった。



「男? 男だと…?」
義父であり、師匠である或真敷天斎に、影郎が第一子の誕生を報告すると、義父は顔色を変えた。
「ならん… その子を後継ぎには、認めんぞ!」
予想に反した反応に、影郎はひどく困惑した。
愛娘が子を産んだというのに、喜びや、娘への労いはないものなのか。
「前の子も男だった。だから引き取らなかったのだ…。ワシは、男の孫など、いらんのだ!」
天斎は興奮して声を荒げた。
「男はいらん! 女しか、認めん!」

にわかに悪魔のような笑みを浮かべたかと思うと、これぞ名案とばかり、天斎は影郎にその要求をつきつけた。
「その子をこの家に入れたければ、条件がある。女の子として育てるのだ。女の服を着せ、女の子として躾けろ。世間にも、この子は女の子だと言って通せ。それならば、後継ぎとして認めてもいいだろう。
そうでなければ、この家には入れさせん。…わかったな。」

それは命令だ。
義父のその理不尽な要求を、赤ん坊の父親は断ることができなかった。
師匠の大切な、目に入れても痛くない程溺愛している一人娘を結婚という手段で奪ってからというもの、影郎が師匠の命令に背くことは許されなかった。

屈折した愛憎に支配された或真敷ファミリーの姿だった。

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