小説・茜部屋

□めんどくさい嗜好
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「あの。成歩堂さん。このロープはいったい……。
どうして、あたしを、しばるんですか?」
「茜ちゃん。ごめん。ぼくはもう、ガマンできないんだ!」
ガバッ!
「きゃあっ! ま、待ってください!
だったら、なにも、こんな真似しなくても、ちゃんと話してくれたら、
あたしは……」
「!? ストップ! 茜ちゃん、それ以上は言わないで。」
「え。でも、あたし。成歩堂さんのコト、キライじゃないし……」
「やめてくれ! それじゃダメなんだ、ぼくは!」
「??? どういうコトですか?」
「ぼくは……。イヤがる女性をムリヤリ、っていうのじゃないと、
全然、興奮できないんだよ。」
「………………。
そんなコト、言われても。
しょうがないですよ。あたし。成歩堂さんに何かされても、イヤじゃないですもん。」
「そもそも、それがおかしいよ、茜ちゃん!
キミみたいな若い女性が、ぼくみたいな、きたない中年男に襲われて、
イヤがらないなんてさ!」
「そんなコト言われても!
だいたい、成歩堂さんは、べつに、きたなくないですよ!」
「とにかく、イヤがってくれないと、ぼくはムリなんだ!」
「ていうか、イヤがる女性をムリヤリって、それ犯罪じゃないですか!」
「そのスリルがあるから興奮するんだよ!」
「ワケわかんないコト、言わないでください!
まさか、今までに痴漢したこと、あるんですか?」
「今、キミにしようとしたのが、初犯だ。」
「なら、いいですけど……
(相手が、あたしじゃなかったら、100%犯罪者ですよ。成歩堂さん……)」
「どうだい。ぼくのコトが、キモチワルイ変態だって、わかっただろう?」
「ううん……? ちょっと面倒ですけど、
それぐらいで、成歩堂さんのコト、いちいちキライには、ならないですよ。」
「ああ、もう、どう言えば……
百歩譲って、イヤじゃなくてもいいから、抵抗してくれ。
イヤがる態度を取ってくれないか。」
「イヤがるフリ……ですか? それはそれで、恥ずかしくて、
ゼッタイにイヤですね。」
「う。そこをなんとか……」
「だって、あたしがイヤがるフリをするってコトは、
あたしが成歩堂さんに、そうされるコトを望んで、演技をするというワケで……
そんなあからさまなコト、恥ずかしくてできませんよ……。」
「つまり、キミは、そこまではぼくとの行為を望んでいるワケじゃないんだね?
だったら、いいじゃないか、抵抗できるはずだ!」
「ああっ……ん……。だから、成歩堂さんのほうから、さわってくるぶんには、
べつに……イヤじゃな……」
「もっとイヤがって。茜ちゃん。」
「ムリ……はぁん……」
「ムジュンしてる。キミは今、望んでいないと、はっきり言ったはずだ。」
「ちがう……。そ……じゃなくて……ん。あ、あ……
自分から誘う……みたいな、マネは、できないと……言ってるだけ……ですぅ」

「ちょっと。成歩堂さん。なんでやめちゃうんですか。」
「キミがちっともイヤがってくれないからじゃないか!」
「だって、成歩堂さんは痛くするワケじゃないし、やさしくなでるだけなんですもん!
こんなのじゃ、だれも抵抗しませんよ!」
「そんなワケないだろ! 男に体をなでまわされて、だれも抵抗しないなんて、
そんな秩序のない世の中があってたまるか!」
「ううう。ですから、そのぅ……。今の、あたしの場合は、ですけどぉ……。
(なんで、あたし、怒られるの……)
このまま、さわられていたいなー、って……。そんな気持ちになったら、
抵抗する気なんて、ぜんぜん起きませんよ。」
「でもさ……。まったく抵抗されないと、ぼく、ぜんぜん勃たないんだ。」
「…………。ウーン。そうですねえ。
ちょっとイヤですけど、乱暴にしてくれたら、自然に抵抗できそうかな。」
「女性を乱暴にあつかうのは、ぼくのシュミじゃないよ。」
「もう! ワガママ言わないでくださいよ。話がちっとも進まないじゃないですか。」
「それにしても。キミに、拒絶されないなんて、思ってもみなかったんだ。」
「そう思ってて、襲うのは、カンベンしてほしいですケド……
ほかならぬ、成歩堂さんですから、あたしも、できるだけのコトは、協力します。
でも、あたし、今から出かけなきゃいけないんです。
帰ってきたら、ゆっくり……。それまで、待っててくださいね。」
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