小説・成響部屋

□Invitation
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これ以上、進んではいけない。
そう直感した牙琉は、唐突に抵抗した。
「……待ってくれ、ボクは本当に、そんなコト望んでないんだ!」
成歩堂は牙琉の顔を、不思議そうに覗き込む。
「……キミは、ボクのことが好きなんじゃないの?」
「そう、だけど、でも……!」
「なのに、ボクの言うコトが聞けないっていうのかい?」
「えっ……?」
成歩堂の目が冷ややかに光る。

嫌悪を感じた牙琉は、咄嗟に成歩堂の下にいた体勢から逃れ、腹ばいになった。
しかし、成歩堂に背後からのしかかられ、両腕を取られる。

むろん行為の強要は犯罪だ。
「言わなくても解ってるだろうけど、ボクを被害者にすると、ためにならないよ。」
牙琉はなんとか冷静を保ち、牽制する。
「……そうはならないよ。キミがボクを好きだから。」
耳元で成歩堂にささやかれ、牙琉はカッとなった。
「何を言っている! 強要は立派な犯罪じゃないか!」
「キミはボクを訴えない。だから、大丈夫さ。」
「なっ……!」

「キミがボクにしたコトを考えたら、これぐらい、痛くないはずだよ。」
(この男……わざと言っているのか?)
牙琉はムカムカと腹が立ってきた。
自分の両腕を戒める成歩堂の両腕を、強引に振りほどいた。
やっと、成歩堂と少し距離を置くことができた。
「だから、それが犯罪じゃないか! 脅迫してるじゃないか!」
「犯罪被害者になりたくなければ、合意するんだね。
キミが、してほしいと言うまで、待っててあげるよ。」
成歩堂は余裕の笑みを浮かべる。

合意すれば、さっきの続きをしてもらえる……、それは甘美な誘いだ。
成歩堂の指先で、体の線をなぞってほしい。
だが……

「合意なんて……ムリだ。アンタの気持ちも解らないのに」
「気持ち? 気持ちだって? ボクの?」
牙琉は――さっきからずっとそうだが――気分を害した。
成歩堂にあからさまにバカにされている。
「ああ。キミは自分に好意を持ってくれている相手じゃないと、抱かれるのがイヤなの?
ずいぶん理想が高いんだね。」
「普通だ!」
牙琉はつい怒鳴ったが、怒るのもバカらしくなってきた。
こんなに話の通じない男だとは思わなかった。
それでも弁護士か。いや、元弁護士だったか。
「そんなことだから、キミ、今まで経験がなかったんじゃないか。」
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