小説・成響部屋

□5ビジュアル発表記念SS
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(裁判所の廊下で)



開廷前。まだ時間があったので、ぼくはお茶を飲もうと裁判所の廊下を歩いていた。
すると。前からあの男が歩いてきた。
「やあ。おはよう。牙琉検事。」
「…おはよう。」

あの男。彼の名は成歩堂龍一。弁護士だ。
青いスーツに身を包んでいる。
彼は最近弁護士として復帰したのだが、ずいぶん前、若い頃も彼は
青いスーツで法廷に立っていた記憶がある。
少し前まで無精ヒゲを生やしていたのだか、今ではキレイに全部剃っている。
トレードマークだった帽子も、今は被っていない。
法廷では帽子は禁止だし、だいたい、スーツにニット帽は合わない。

ある件で、ぼくは彼に弱みを握られているのだ。
いや。違うかな。ぼくは彼に負い目がある。
その気持ちを見透かされて、いいように扱われている。

「ちょっと。来て。こっちに。」
肩を叩かれ、うながされる。
「何の用だい。」
「いいから、いいから。」
連れ込まれた先は男性用トイレだ。
狭い個室に男2人で入り、彼はカギをかけた。
逃げ場を失ったぼくは、迫る彼に唇を押しつけられ、強引にキスされた。

抵抗もできない自分が情けないとは思う。
どうしても、彼の行為には逆らうことができない。
どんなに悔しいと思っても、体が動かないのだ。

調子づいた成歩堂は片方の大腿をぼくの股間に押しあて、ぼくの体をまさぐり始めた。
さすがにこれは困る。
「バカッ! 今から法廷だぞ!」
「…5分で終わらせるよ。」
そういう問題じゃない!
…ていうか、5分ですまされてたまるか!

「いい…かげんに、しろ!」
ぼくは必死に、彼の体を押し戻した。
「こんな所、汚いからイヤだ!」
「…………」
「…今夜、あいてる。あけるから。だから、今夜…」
「分かった。今夜、待ってるよ。」
ニヤリと笑う成歩堂。

彼が先にトイレを出ていき、ぼくは少し時間をおいて出た。
今から法廷だ――



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2012/9/8
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