物語


□包んだ体温
1ページ/5ページ




「暑いから放して」
「いやや」

そんな問答を数分間の間に何度も繰り返していた。
市丸は日番谷を抱っこした上に布団を自分の上から何枚も覆っている。
しかし、日番谷の顔が赤いのは単純に市丸の所為ではない。
普段より3度は上がっているであろう体温が体から熱を発し、発汗させているからだ。
「普通に寝たい」
「いやや、僕が温めたいんや」
口からは反抗する言葉が出るが、弱々しく、ぐったりと体を市丸に預けている日番谷は自分から動く気配はなかった。
全身弛緩させているとはいえ、不安定な場所ではゆっくりと眠れない。
うとうとする度に市丸がグラグラと動くものだから、気になって寝付けないのだ。
「頭とか冷やすだろ、普通」
「さっき寒いゆうたやん」
「そりゃ、さみぃけど…」
暑いし寒い。そう言っているのに市丸はいまいち話が通じない。
諦めたように溜息を吐くと、どうでも良さそうに眼を閉じだ。
そこにカラカラ、と軽い音を立てて新たな来客が訪れる。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ