物語
□君の涙を拭うために僕の指がある
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昔から、聡い子だと言われていた
日番谷は確かに聡い子どもだった
何をするでも、第三者からの視点を忘れず、理屈に合った正当な意見を言い
何でも一人でそつなくこなす子どもだった
相俟ってこの容姿
大人からは
嫌われた
それなりに子どもの遊びにも参加していたが、所詮は幼なじみの友達であり自分の友達ではない
誰も一人の日番谷に関わろうとはしなかった
尊敬と畏怖は紙一重なのだ
自然と人の輪から離れて行き、一人読書をする時間が増えた
益々隔離されていく事も彼は気にしなかった
どこか、諦めていたのかもしれない
この世界を
それでも、親しい祖母代わりの老女や姉のような少女には感情表現豊かだ
その後入った真央霊術院で仲良くなった同級の友人にも、外見どおりの年端もいかない少年の顔を見せた
しかし、やはり元より責任感の強い日番谷は、卒業の言葉が近くなればなるほどに顔は厳しくなっていった
厳しい世界だという事を知っているから、外見のどうしようもないリスクを補う為に人一倍努力をした
友人を失う、という過去も日番谷の心を蝕んだ
何時からか笑わない子になった
何時からか泣かない子になった
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