物語


□包んだ体温
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「ギン、冬獅郎をちゃんと寝かしてあげなさい」
「えー…」
なんでなん?と駄々をこねる様に戸の前に立つ藍染を見上げた。
藍染は呆れた顔を隠さずに見せては隣の台所へと向かう。
「風邪は体を温めて、太い血管を冷やしたほうがいいんだよ」
「せやけど、冬獅郎は自分で体冷やしますやん。ほなら温めるだけでええんとちゃいます?」
藍染は氷水に手拭いを浸した桶を手にしたまま動きを止めた。
確かに日番谷は風邪で霊圧のコントロールが少し出来なくなっているため、まだ秋口だというのにひんやりと寒い。
外の方が暖かいかもしれない。
市丸がなぜ温めようと躍起になっていたのかを知り、頷きながらも藍染は市丸の膝から日番谷を奪った。
「こないに震えてますよって」
日番谷の体温がなくなり寒さを感じるのか肩を竦め、拗ねたように唇を尖らすと、心配そうに汗ばんだ額を細長い指で何度も撫でる。
「これを冷やしてる、とは言わないよ。下手に冷やしても効果はないからね」
手際よく手拭いを額に乗せると熱を計るように扁桃腺に手を当てる。
氷水に浸していた藍染の手は冷たく、日番谷は気持ちよさそうに喉をのけ反らした。



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